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2009年2月

同じ趣味

犀川君と私、これからの旅に備えてリュックが欲しい。
加えて、私は旅を刻む、ハイクオリティなデジカメが欲しい。
犀川君は来週、友人と旅に出るので、リュックは急ぎで欲しい。
ならば、ということで、バレンタインのチョコを一緒に買いがてら
お買い物をしようとデートの約束をした。

週間予報では雨、ということだったので、
買い物が終わったら、喫茶店でまったりしようと計画を立てた。

が、デート前日に春一番が吹き荒れ、
当日は驚くほどの晴天と夏日のような陽気。
一気に春がやってきた。

が、とにかく歩いていると熱い。
すると、しばらくして、犀川君の様子が変だ。
聞けば、「この陽気、駄目だ…」と元気がない。
そう、犀川君は春が大嫌いなのだ。
春となると、憂鬱になって、花見に行こうと誘っても嫌だと言う。
あの浮かれたような雰囲気が、たまらなく滅入るのだそうだ。

それでも、私はデジカメの下見で興奮。
それまでパンフレットであるカメラに目をつけていたのだが
店頭で実物をみると、思っていた以上に素敵だ。
それに思いのほか値段が下がっていて、躊躇いが薄れてきた。
どうしようか、と思っていると、犀川君が「中古で十分」と言う。
犀川君は写真が趣味で、カメラにも詳しい。
実はこの私が狙っているカメラと同じシリーズのカメラも
去年の秋に中古で購入したらしく、「十分満足」なのだそうだ。

「だいたい、デジカメはどんどん新商品が出てくるからキリがない。
解像度も頭打ちのところまで来たと言っていいだろうし、機能も性能も
十分なレベルまで来ているしね。だったら中古で安く買った方が賢い」

とはいえ、中古かあ…とあまり乗り気になれなかった私。
誰が使ったか分からないようなものに安くなっているとはいえ
それなりの大金を投資するのだから、う〜んとうなってしまう。

そんな私に、とりあえず中古カメラを見せようと思った犀川君に
連れられて、彼がよく行くという中古屋さんに行くことになった。
どうせ小汚い雑多な店なんだろうと思っていたら大間違い。
雑居ビルの3階までエレベータでいくと、なんとそこにはオシャレな店が。
高級感あふれる店内は、私の中の中古屋の概念を完全に打ち破っていた。
「きれいだな」とつぶやくと、「でしょ」と誇らしげな犀川君。
「このモデルは超人気だから中古出ているかなあ」と言いながら
そのモデルが置かれているはずのガラス棚のところまで行ったら
2台鎮座していた。「うわ、ラッキーだね、2台もある」と犀川君。
見れば、新品とどこが違うんだろう?と素人目には全く分からないほど。
見れば、そのうち1台はメーカー保証1年有効となっている。
てことは…ほぼ新品??? 早速、お店の人に言って、出してもらって
カメラを手にとってみることに。詳しい犀川君があれこれチェックを始める。
私はよく分からないので、すべて犀川君に任せると、最後に犀川君が
「うん、こっちのメーカー保証1年の方がいいね」と言う。
ならば、ということで、ヨドバシよりも15,000円も安い値段でお買い上げ。
あとで箱を空けてみて気づいたのだが、備品は新品のままビニール袋に
入ったまま開封されていなかった。あらー、めちゃラッキー。

浮いたお金でSDカード(4GB)と電池を買って、喫茶店へ。
早速箱から出して、セッティングして、撮影開始。
元気がなかった犀川君も次第に元気になってきて、
あれこれ撮影方法についてアドバイスをくれた。

「雑多な都会の中にいると息が詰まりそうだから、都電に乗って
少しでもここから離れよう。その方が撮影素材もありそうだし」
犀川君がそう言うので、2人してバスに乗り込み、都電のある街まで。
そこであれこれ撮影を始めると、想像以上にいいカメラだと判明。
腕の無い私でも、味のある(と思える)写真が、ぼちぼち撮れるのだ。
こうなってくると面白い。
パチパチ町中でカメラのシャッターを切っていたら
犀川君も、「じゃあ、僕も」と言って、彼はフィルムの一眼レフカメラを
鞄の中から取り出して、都電を撮影していた。

帰宅後、私の撮影した写真を見てもらい、アドバスをもらった。
「これからはお互いに写真を見せ合う楽しみができたね」
犀川君は嬉しそうだ。
図らずも同じ趣味を持てそうで、私も何だかワクワクしている。

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時を刻むアルバム

日記を書き怠っている間に、本当にいろんなことがあった。

まずは、あ〜あ、と思ったこと。
昨日、本当に久しぶりにハヤテに会った。
仕事の打ち合わせがあって、今年初めての顔合わせ。
もう、今更ドキドキワクワクはしないけれど、
久しぶりだったから、会う前までは多少は楽しみであった。

が、どうだろう…。
久しぶりに会ったハヤテは、哀しいくらいにくたびれていた。
髪は伸び、何だか脂っぽく頭に張り付いている感じ。
前からこうだったのだろうか?
私の見る目が変わったから?
ずっと、ハヤテはこうだったのだろうか??
最初に思わず目を見開いて、そんなハヤテを愕然としながら捉え、
すぐに目をそらして、それ以降、まともに見れなかった。
こんな哀しい姿をこれ以上、記憶に焼き付けたくない。

おまけに、哀しいくらい仕事の話も盛り上がらない。
完全に二人の関心事は異なってしまったようだ。
ああ、こんなもんだろうか。
だが、その距離を縮めたいとは、全く思わない自分がいる。
3年も恋焦がれた人なのに、
人の心はなんと移ろいやすいものか…。

帰り道の電車の中で、車窓を見ながらつくづく思った。
「ああ、犀川君が私の恋人でよかった〜」
もちろん、犀川君はハヤテよりも10以上若い。
肉体的な若さからくる、溌剌とした印象があるのは当然だ。
だが、それだけでは説明しきれない違いがある。

ハヤテはそもそも、だらしがないのだ。
もちろん、私はそこが好きだった。
一方、犀川君にはそういった所がまるでない。
そもそも几帳面だし、マメだし、ハヤテとは対照的なのだ。
はじめは、それが嫌だった。
もっと適当になってくれればと思っていたものだ。
ところが、付き合ううちに、几帳面でマメな性格が
私を幸せに導いてくれていることに気づいた。

たとえば、犀川君はとにかくマメで、よくメールをくれる。
犀川君に言わせると、他のことはあまりマメじゃないと言うが
こまめに私を気遣ってくれる。これが心地いい。

たとえば、犀川君と一緒に駅弁を食べたりしていると
食べ終わると同時に、てきぱきと片付けてくれる。

それでいて、細かいことは一切言わない。
私に何かを強いることもない。
私は私でいいのだ。それがとても居心地がよい。
すっかり私は、犀川君に染まっているわけだ。

となると、不安がなくもない。
ハヤテへの思いが消えた途端に見えてきたように
恋のフィルターが掛かって犀川君を見ている以上、
本当の犀川君がどんな人なのか、
私は冷静に見えてない可能性が高い。
ただ、それを差し引いても、
ハヤテよりも犀川君の方が私を幸せにしてくれる
可能性ははるかに高いことだけは明らかだ。
第一、犀川君はとても私を思ってくれているのが分かる。
それ以上、幸せになる条件があるだろうか。

ということで、「あ〜あ」と思いながら、
ついにハヤテとの恋を完全精算したミサトなのでした。

で、そんな犀川君とは雪暮れの旅に行ってきた。
好きなもの、感動するものがとても似ているので
とにかく楽しい旅で、あっという間に終わってしまった。
二人の距離がさらに近づいたように思う。
帰ってきてからも、毎日、あきれるほど仲良しで、
自分たちで「こりゃまさにバカップルだ」と笑っているほどだ。

付き合い始めてから、ずっと楽しみにしていた旅行だっただけに
終わってちょっと寂しくなった。
そうしたら、「次の計画をたてよう」と犀川君。
これまでの旅、これからの旅を記録するために
二人は今、アルバムを作っている。
犀川君は趣味の写真を。
私は趣味の水彩画を。
それぞれを互いに素材としてプレゼントし合い、
一緒にアルバムにはったり、コメントを入れたりして
二人の時間を刻むことにしたのだ。

「ずっとアルバムを二人で作ろうね」と犀川君が笑う。
今日は、「旅の写真が出来たよ」と連絡があった。
私も急いで、旅の絵日記を描かなくては。

こういうことが好き、を共有できるのは
こんなに楽しいものなんだな、としみじみ。
いつまでも、アルバム作りが続きますように。

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