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広がる夢

「ちょっと時間が作れそうだから、ちょっとだけ会おうか」
夕方に犀川君からメールがあった。
夜8時にいつものカフェで待ち合わせ。
顔を出すと、既に来ていた犀川君がニッコリ笑って出迎えてくれた。

青森・秋田への旅について、あれこれまた相談した。
ブルートレイン好きの二人なので、あけぼので青森まで行く。
やれ、B寝台にするか、個室にするか。
やれ、上野で乗り込む前に風呂に入れるかどうか。
やれ、上野で乗り込む前に夜ご飯どうしようか。
やれ、翌朝の朝ご飯はどうしようか?車内販売の駅弁か?
やれ、その翌日はどこに泊まろうか。温泉宿がいいな。

まだ犀川君と出会って間もない頃、彼に勧められた鉄道の写真集があった。
その中に、「雪暮れ」というタイトルの写真があった。
雪深い里にある小さな駅の夕暮れに、しんしんと雪が降る場面。
雪が積もる音以外は静寂だけがあるような、そんな写真。
すっかりこの世界観に魅せられて、見てみたいと言い出したのが
今回の旅プロジェクトの始まりだ。

ところが、この駅、とっても電車の乗り継ぎが悪い。
ここを目指すと、他の予定がすべて超タイトになってしまうという。
なので、「いいよ、ここ、行かなくて」と言うと
「でも、ここに行きたかったんだよね、ミサトさん」と犀川君。
「うん。でもさ、時間的に余裕があるわけじゃないしね。いい、いい」
「それじゃね、この駅じゃなくてもいいなら、この写真よりももっと
素敵な駅が他にもあるんだよ。そこに連れて行ってあげる」と犀川君。
「おお!それで十分。そうしよう、そうしよう」と私。

電車の乗り継ぎ等、鉄道周りの一切は彼に任せておけばよい。
私はかわりに、宿を探すことにした。
犀川君と初のお泊まりとなる宿である…。
雪深い街をさんざん歩いてたどり着く先だから
私としては温泉宿でゆっくり湯を楽しみたい。
食いしん坊なので、できればご飯がおいしい方がよい。
欲張るときりがない。でも、一番は、
なんとなく、雪深くて静寂で、まるで二人しかいないみたいな
そんなロマンチックな宿がいい…なんて夢は広がるばかりだ。

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