今なら間に合う
夜、早々に寝てしまおうとしていたところに、犀川君からメールが来た。
「どうしたら元気になってもらえるんでしょうね…」というもの。
もう!!!放っておいてくれと思いながら、「元気だからご心配なく」と素っ気なく返した。
すると、さすがに飽きれたのか、「分かりました」と一言だけ返ってきた。
もう!!!布団を頭から被り、寝ようとするけれど、一向に寝れない。
なんだよ、分かりましたって!何が分かったんだよ!!!…イライラは最高潮。
そのまま強引に寝入ろうと思ったが、どうにも無理そうだし、
だいたい、このまま誕生日を終えて、明日になったら、なんて言えばいいのだろう?
そもそも、これが間違いなく溝になって、本当に終わることになるかもしれない…。
そう思うと、さすがに何だかためらってきた。
ふう…と深呼吸してみる。そして、冷静に考えてみる。
何がいけなかったんだ?
どうしてイライラしてたんだ?
悪いのは本当に犀川君?
頭にのぼった血を沈めながら、出来るだけ冷静に振り返ってみる。
どうしてイライラしてたの?
そう、朝から天気が悪かったから。
そう、そもそも今日が誕生日だと犀川君に告げていなかった自分が嫌だったから。
そう、誕生日だから、普通にやっぱり会いたかったから。
そう、でも、誕生日だと告げていないから、会いたいとも言えないから。
そう、だいたい仕事で忙しいと犀川君が言っていたし。
そう、仕事が忙しいとか言って、休みはあるし、一人で出掛けている時間はある。
そう、そもそも休みの日に会おうとしてくれない態度が腹立たしかったから。
そう、誕生日と告げたら、おめでとうと言うだけだったから。
そう、だいぶ時間が経ってから会おうなんて、遅過ぎたから。
そう、それでも待っていると言ってくれなかったから。
で、悪いのは犀川君?
いや、天気は自然現象だもの。どうしようもない。
いや、誕生日を知らなかったんだもの。
いや、素直に会いたいと言ってないもの。
いや、休みなら会えって普通思いますよね?という問いに「気にしないで」と
言ったのは、私の方だもの。
いや、おめでとうって言われて怒る方がおかしい。
いや、そりゃ、仕事のメドってもんがあるだろうし、そもそも私の方から会いたい
と言い出したわけじゃないし。
いや、私の返事が素っ気ないし、断じて会わない、という雰囲気ありありだったし。
ね、だから、やっぱり、冷静なれば、私が悪い。
私が勝手に、一人でどんどん怒りを募らせてしまっただけの、要はワガママだったのだ。
むしろ、犀川君は優しく、根気づよく、元気を出してもらおうと、
気を遣いながら、仕事の合間にメールをくれた。感謝こそすれど、怒るなどお門違いだ。
分かっていたのだ。要は、自分で収拾つかなくなっていただけだと。
それでも、どうしてもそれを認めたくなかった。
強引に接してほしかったのだ。ただ、それだけだった。
だが、それを全く伝えずして、相手に求めるというのは所詮無理な話だ。
このままじゃいけない。きっといつか後悔する。
いくら犀川君が気が長くて、優しい人だと言っても限度というものがある。
やはり、今日起きたことは今日解決すべきだ。
誕生日が終わるまであと少し。今なら間に合う!
布団から出て、素直に謝りのメールを打って送った。
そして、なぜイライラしていたのか、どうして欲しいと思っていたのか
それも素直に伝えた。そうしないと、犀川君だって納得できないだろう。
すぐに返事が返ってきて、「僕の言い方が悪かったんだと思う」と謝ってきた。
そして、自分の気持ちは全く変わらないから、と言ってくれた。
素直になったら、イライラはすーっと消えていった。
イライラが消えたら、急に眠気が襲ってきて、ようやく寝付けた。
目覚めたら、昨夜のイライラが嘘のように消えていて、心が軽かった。
やっぱり、昨夜、きちんと思いを伝えて、謝ってよかった。
お礼とお詫びの気持ちを込めて、おはようメールを送ると、
「元気になって本当によかった」と犀川君からすぐに返事がやってきた。
犀川君から昼間きたメールによると、のどが痛くて風邪をひいたかもしれないと言う。
「今日は仕事を早めに切り上げて、早く帰るように」と言うと
「午後は外出なので、直帰して、早めに休みます」と返ってきた。
風邪ぎみの、少し鼻声の男は、案外色気を感じるものだ。
ちょっぴり、そんな犀川君を見てみたいなと思ったりもしたが
昨日のように、マグマのような激情は影を潜め、今日は遠くから
心配するだけでも、心穏やかな状態をキープできている。
悪化しないことを願いつつ、犀川君に「お大事に」とメールした。
これほどに、自分の感情の波が激しいと、ふいに取り返しのつかないことを
してしまうのではないかと不安になる。しかし、不器用にいろんなところに
激突しながらも、こうやって出来る限り、素直になることを心がけていれば
今後、またこうしたことがあっても、私たちは乗り越えることができるかな。
そういえば、ハヤテが今朝、メッセで話しかけてきた。
「昨日、誕生日プレゼントを渡したのに、忘れていったな!俺は悲しい」
確かに、もらった漫画はオフィスに放置してきてしまった(笑)
「ごめん、2008年の心に響いた誕生日プレゼントNO.1に登録したから許して」
そう言うと、よし、と許してくれた。
そして、ジジが都合により今の会社を退社することになり、そのお別れ会を
しようと言い出したので、「最後、特別に私への暴言を許そう」と言うと
「俺は今後も暴言を言い続けるから、常に許してもらわないと〜」と
ハヤテは実にご機嫌だった。あいつ、今後も言い続けるつもりなのか…orz
そう、まだハヤテには、犀川君という存在が出来たことを告げていない。
言ったらどうなるだろう…。なんとなく怖くて言えない。狡いかもしれないけれど。
余談だが、昨日のミーティングはタカ君もいた。
実に1カ月ぶりの再会だが、目を合わせるようなことは避け、席も遠くに座った。
元気そうだったので、ひとまず安堵。
しばらくは、直接声をかけるのは避けておこう。念には念を。
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