オレンジ色の月
久しぶりのエントリー。
この間、犀川君とは仲良くやってきた。
今日も会って、バイバイを言うその瞬間まで、ずっと触れ合っていた。
なのに、なんだろう…この感覚は。
会えば必ず、かけがえのない人だと思えるのに
離れると、とても不安定な気持ちになる。
私は本当に犀川君が好きなのだろうか。
何だかよく分からなくなってしまった夜。
帰り道、オレンジ色の月を見たせいだろうか。
妙に胸騒ぎして、落ち着かなくなった。
久しぶりのエントリー。
この間、犀川君とは仲良くやってきた。
今日も会って、バイバイを言うその瞬間まで、ずっと触れ合っていた。
なのに、なんだろう…この感覚は。
会えば必ず、かけがえのない人だと思えるのに
離れると、とても不安定な気持ちになる。
私は本当に犀川君が好きなのだろうか。
何だかよく分からなくなってしまった夜。
帰り道、オレンジ色の月を見たせいだろうか。
妙に胸騒ぎして、落ち着かなくなった。
とある案件の締め切りが月末で、私は今、猛烈に忙しい。
連日、深夜まで作業し、時には泊まり込んでの作業の日々。
元々カラダの弱い私が、これまで何とかもったのも、
気が張っていたからと、ブルーベリージュースのおかげだった。
が、一つの山を越えて、ほんの少し気が緩み、
運悪くブルーベリージュースが切れてしまったら…
途端に体調を崩し撃沈…。この大切な時期だと言うのに!!
だが、どんなに気が焦っても、カラダが全く動かない…。
そんな時、ずっと犀川君がメールで励ましてくれた。
撃沈ゆえに、まめに返信ができなかったにもかかわらず
絶えず、メールを入れてくれたことが、私の心を和ましてくれた。
なんとか、体調が完璧とまではいかないまでも戻った今日、
なんと、今度は励まし続けてくれた犀川君が風邪をひいてしまった。
「あったかくして寝てね」と言うと
「あったくして寝るね」と犀川君。
「抱き締めてあったかくしてあげたいなー」と言うと
「風邪がうつっちゃうから、治ったらね(笑)」と犀川君。
かわいいなー(^_^)
今度は私の番だな。
仕事の合間をぬって、いっぱい励ましのメールを送ろうっと。
その後、犀川君と私はとっても仲良くやっている。
淡白だった犀川君も、近頃は情熱的で、
どこか物足りなさを感じていた私も、大満足な日々を過ごしている。
何もかも、合う人とようやく出会えた、という実感を持てるようになった。
今の仕事が一段落したら、二人で春の旅に出掛ける予定。
春が嫌いな犀川君。
春が好きな私。
去年よりも素敵な春を見つけに、電車に乗って春の海へ行くつもり。
犀川君と私、これからの旅に備えてリュックが欲しい。
加えて、私は旅を刻む、ハイクオリティなデジカメが欲しい。
犀川君は来週、友人と旅に出るので、リュックは急ぎで欲しい。
ならば、ということで、バレンタインのチョコを一緒に買いがてら
お買い物をしようとデートの約束をした。
週間予報では雨、ということだったので、
買い物が終わったら、喫茶店でまったりしようと計画を立てた。
が、デート前日に春一番が吹き荒れ、
当日は驚くほどの晴天と夏日のような陽気。
一気に春がやってきた。
が、とにかく歩いていると熱い。
すると、しばらくして、犀川君の様子が変だ。
聞けば、「この陽気、駄目だ…」と元気がない。
そう、犀川君は春が大嫌いなのだ。
春となると、憂鬱になって、花見に行こうと誘っても嫌だと言う。
あの浮かれたような雰囲気が、たまらなく滅入るのだそうだ。
それでも、私はデジカメの下見で興奮。
それまでパンフレットであるカメラに目をつけていたのだが
店頭で実物をみると、思っていた以上に素敵だ。
それに思いのほか値段が下がっていて、躊躇いが薄れてきた。
どうしようか、と思っていると、犀川君が「中古で十分」と言う。
犀川君は写真が趣味で、カメラにも詳しい。
実はこの私が狙っているカメラと同じシリーズのカメラも
去年の秋に中古で購入したらしく、「十分満足」なのだそうだ。
「だいたい、デジカメはどんどん新商品が出てくるからキリがない。
解像度も頭打ちのところまで来たと言っていいだろうし、機能も性能も
十分なレベルまで来ているしね。だったら中古で安く買った方が賢い」
とはいえ、中古かあ…とあまり乗り気になれなかった私。
誰が使ったか分からないようなものに安くなっているとはいえ
それなりの大金を投資するのだから、う〜んとうなってしまう。
そんな私に、とりあえず中古カメラを見せようと思った犀川君に
連れられて、彼がよく行くという中古屋さんに行くことになった。
どうせ小汚い雑多な店なんだろうと思っていたら大間違い。
雑居ビルの3階までエレベータでいくと、なんとそこにはオシャレな店が。
高級感あふれる店内は、私の中の中古屋の概念を完全に打ち破っていた。
「きれいだな」とつぶやくと、「でしょ」と誇らしげな犀川君。
「このモデルは超人気だから中古出ているかなあ」と言いながら
そのモデルが置かれているはずのガラス棚のところまで行ったら
2台鎮座していた。「うわ、ラッキーだね、2台もある」と犀川君。
見れば、新品とどこが違うんだろう?と素人目には全く分からないほど。
見れば、そのうち1台はメーカー保証1年有効となっている。
てことは…ほぼ新品??? 早速、お店の人に言って、出してもらって
カメラを手にとってみることに。詳しい犀川君があれこれチェックを始める。
私はよく分からないので、すべて犀川君に任せると、最後に犀川君が
「うん、こっちのメーカー保証1年の方がいいね」と言う。
ならば、ということで、ヨドバシよりも15,000円も安い値段でお買い上げ。
あとで箱を空けてみて気づいたのだが、備品は新品のままビニール袋に
入ったまま開封されていなかった。あらー、めちゃラッキー。
浮いたお金でSDカード(4GB)と電池を買って、喫茶店へ。
早速箱から出して、セッティングして、撮影開始。
元気がなかった犀川君も次第に元気になってきて、
あれこれ撮影方法についてアドバイスをくれた。
「雑多な都会の中にいると息が詰まりそうだから、都電に乗って
少しでもここから離れよう。その方が撮影素材もありそうだし」
犀川君がそう言うので、2人してバスに乗り込み、都電のある街まで。
そこであれこれ撮影を始めると、想像以上にいいカメラだと判明。
腕の無い私でも、味のある(と思える)写真が、ぼちぼち撮れるのだ。
こうなってくると面白い。
パチパチ町中でカメラのシャッターを切っていたら
犀川君も、「じゃあ、僕も」と言って、彼はフィルムの一眼レフカメラを
鞄の中から取り出して、都電を撮影していた。
帰宅後、私の撮影した写真を見てもらい、アドバスをもらった。
「これからはお互いに写真を見せ合う楽しみができたね」
犀川君は嬉しそうだ。
図らずも同じ趣味を持てそうで、私も何だかワクワクしている。
日記を書き怠っている間に、本当にいろんなことがあった。
まずは、あ〜あ、と思ったこと。
昨日、本当に久しぶりにハヤテに会った。
仕事の打ち合わせがあって、今年初めての顔合わせ。
もう、今更ドキドキワクワクはしないけれど、
久しぶりだったから、会う前までは多少は楽しみであった。
が、どうだろう…。
久しぶりに会ったハヤテは、哀しいくらいにくたびれていた。
髪は伸び、何だか脂っぽく頭に張り付いている感じ。
前からこうだったのだろうか?
私の見る目が変わったから?
ずっと、ハヤテはこうだったのだろうか??
最初に思わず目を見開いて、そんなハヤテを愕然としながら捉え、
すぐに目をそらして、それ以降、まともに見れなかった。
こんな哀しい姿をこれ以上、記憶に焼き付けたくない。
おまけに、哀しいくらい仕事の話も盛り上がらない。
完全に二人の関心事は異なってしまったようだ。
ああ、こんなもんだろうか。
だが、その距離を縮めたいとは、全く思わない自分がいる。
3年も恋焦がれた人なのに、
人の心はなんと移ろいやすいものか…。
帰り道の電車の中で、車窓を見ながらつくづく思った。
「ああ、犀川君が私の恋人でよかった〜」
もちろん、犀川君はハヤテよりも10以上若い。
肉体的な若さからくる、溌剌とした印象があるのは当然だ。
だが、それだけでは説明しきれない違いがある。
ハヤテはそもそも、だらしがないのだ。
もちろん、私はそこが好きだった。
一方、犀川君にはそういった所がまるでない。
そもそも几帳面だし、マメだし、ハヤテとは対照的なのだ。
はじめは、それが嫌だった。
もっと適当になってくれればと思っていたものだ。
ところが、付き合ううちに、几帳面でマメな性格が
私を幸せに導いてくれていることに気づいた。
たとえば、犀川君はとにかくマメで、よくメールをくれる。
犀川君に言わせると、他のことはあまりマメじゃないと言うが
こまめに私を気遣ってくれる。これが心地いい。
たとえば、犀川君と一緒に駅弁を食べたりしていると
食べ終わると同時に、てきぱきと片付けてくれる。
それでいて、細かいことは一切言わない。
私に何かを強いることもない。
私は私でいいのだ。それがとても居心地がよい。
すっかり私は、犀川君に染まっているわけだ。
となると、不安がなくもない。
ハヤテへの思いが消えた途端に見えてきたように
恋のフィルターが掛かって犀川君を見ている以上、
本当の犀川君がどんな人なのか、
私は冷静に見えてない可能性が高い。
ただ、それを差し引いても、
ハヤテよりも犀川君の方が私を幸せにしてくれる
可能性ははるかに高いことだけは明らかだ。
第一、犀川君はとても私を思ってくれているのが分かる。
それ以上、幸せになる条件があるだろうか。
ということで、「あ〜あ」と思いながら、
ついにハヤテとの恋を完全精算したミサトなのでした。
で、そんな犀川君とは雪暮れの旅に行ってきた。
好きなもの、感動するものがとても似ているので
とにかく楽しい旅で、あっという間に終わってしまった。
二人の距離がさらに近づいたように思う。
帰ってきてからも、毎日、あきれるほど仲良しで、
自分たちで「こりゃまさにバカップルだ」と笑っているほどだ。
付き合い始めてから、ずっと楽しみにしていた旅行だっただけに
終わってちょっと寂しくなった。
そうしたら、「次の計画をたてよう」と犀川君。
これまでの旅、これからの旅を記録するために
二人は今、アルバムを作っている。
犀川君は趣味の写真を。
私は趣味の水彩画を。
それぞれを互いに素材としてプレゼントし合い、
一緒にアルバムにはったり、コメントを入れたりして
二人の時間を刻むことにしたのだ。
「ずっとアルバムを二人で作ろうね」と犀川君が笑う。
今日は、「旅の写真が出来たよ」と連絡があった。
私も急いで、旅の絵日記を描かなくては。
こういうことが好き、を共有できるのは
こんなに楽しいものなんだな、としみじみ。
いつまでも、アルバム作りが続きますように。
昨年末。急遽思い立って一人旅に出かけた。
とはいえ、旅中、頻繁に犀川君とはメールで連絡を取り合っており
半ば、一緒に旅先をめぐったような錯覚に陥るほどだった。
別に、犀川君と何かあったわけではない。
年末に思わぬ時間が出来たのと、クリスマスに寝台列車を見て
急に旅に出たくなったのと、たまたま買った観光本に影響されたのと
ひとりで気持ちの清算をしたかったからだ。
このブログを書き始めた2006年8月。
私はハヤテに片思いをしていた。
生涯最愛かつ最後の恋だと思っていた。
ハヤテ以外の誰かに心奪われる日がくるなんて思いもしなかった。
ハヤテはそれまで出会った男たちとはまるで違っていた。
破天荒で予測不可能。流星のような彼に私は翻弄された。
あれから丸2年。正直、私は疲弊し切っていた。
そして、犀川君に出会った。
はじめは、彼がハヤテを超える存在になるなんて思いもしなかった。
ただ、犀川君の穏やかさに触れると
日だまりにいるみたいで、心地よさがじんわり心にしみた。
犀川君は決して、ハヤテのように私をドキドキさせない。
いつもジェットコースターに乗っているような時間を
私に与えるハヤテは、私を飽きさせないし、魅力的に映る。
ただ、ハヤテは私の気持ちを察することは絶対にない。
彼はいつだって自分本意で、彼の神輿に私は便乗するだけの話だ。
一方、犀川君は違う。
犀川君は自分の大切なものと、私の大切なものの間合いを考える。
そこにはジェットコースターのようなハラハラはない。
だけど、一緒に神輿を担ぐあったかい楽しさがある。
それは私の心を芯から温め、優しくする。
気づけば、私はその日だまりを心から愛していた。
時々は、慎重すぎる犀川君の言動に、イライラもさせられる。
きっと、犀川君にしてみれば、私という存在は
かつて私にとってのハヤテみたいなものだろう。
彼の背中を押しまくり、ぐいぐいリードする私をみて
犀川君は「ミサトさんといると楽しいなぁ」と笑うのだ。
時々、そんな私にペースを乱されて、
犀川君が疲れやしないか心配になる。
だから時々、私は確認するように「好きだ」と告げるのだ。
こんな心の変化がまさか自分に起きようとは思いもしなかった。
2008年の予想外の展開に自分が一番驚いている。
一人旅をしながら、しみじみ一年を振り返って思った。
ハヤテに恋をした。
片思いだったけど、心底楽しかった。
片思いだったから、とても苦しかった。
ハヤテは今でも仕事の上での同志だ。
きっとそれは、これからも変わらない。
ハヤテとの欧州の旅は一生忘れない。
あの時、結局、何もできなかった自分。
何もしてこなかったハヤテ。
あれでよかったのだと今は思える。
早朝のロビーでハヤテが言った「寂しいなぁ」。
あれを思い出すと今も胸が苦しくなる。
どうしても距離を縮める事ができなかった。
一時は、心が重なっているようにも思えた事もあった。
チャンスを逃したら、軌道は二度と重ならない。
それを思い知った恋だった。
でも、それでよかった。
ハヤテ、大好き。
幸せになってね。
私も幸せになる。
いつか、もっと年をとって
もう一度出会いたいね。
そうしたら、笑って
あの頃、ハヤテが好きだったと言えるかもしれない。
その時まで、この気持ちは封印する。
さよなら、ハヤテ。
私は犀川君の元へ行く。
犀川君に恋をした。
まさかまさかの年下だ。
年下の男と付き合うなんてあり得ないと思っていた。
2歳年下の弟がいるから、年下は苦手だったのだ。
ところがどうだろう。
タカ君には「年下はダメだ」と言って断ったのに
犀川君は事もあろうか、8歳も年下だ。
だから、はじめは、恋仲になるなんて想定外だった。
かわいい後輩だと思って話していた。
彼も油断していたのだろう。
奥手の犀川君が私だと気楽に何でも話してきた。
話すうちに、何だか気が合うと分かった。
価値観がとても似ていると気づいた。
はっとした時には、恋に落ちていたのかもしれない。
ふとしたきっかけで始めたメール交換。
気づけば、次第にやりとりの間隔が縮まり、
いつしか、互いの心の距離まで縮まっていた。
最初は互いに緊張して、会えば空回りしていたけれど
次第に打ち解けて、離れがたき恋人になった。
年の差は全く感じない。
時々、たまらなくかわいくなり、
時々、年上のように頼りになる。
犀川君も年の差は全く感じないと言い、
「だいたい年なんてどうでもいいし」と笑う。
気持ちが重なってしまうと、
年なんて関係ないのだと初めて知った。
そう自覚した時、
私の心の中から、ハヤテが消えていた。
そして今、私の心は犀川君であふれている。
心変わりは、驚くほどあっけなかった。
それでいい。
前へ進んだのだ。
これまで心変わりが怖かった。
だから、それをごまかすように刹那的に生きてきた。
相手に心変わりを促すような事も言ってきた。
心変わりされるのが怖くて先回りしていた。
そんな癖がしみついた私に犀川君は言う。
「ずっと一緒にいようね」
口先だけの人じゃないと知っているから驚いた。
誠実にそう言われると、先回りできなくなる。
今もまだ、心変わりは怖い。
怖いから、心底それを信用できない。
できないけど、信用してみようかなと思えるようになった。
こんなこと、人生で初めてだ。
犀川君は初めて、私に「ずっと」を約束してくれた男だ。
だから思う。
もう少し素直に、一緒に歩んでもいいんじゃないか、と。
心変わりしてもいいじゃないか。
心変わりしたからこそ、私は今幸せなのだ。
2009年は、怖がらず、犀川君と歩んでいく。
そう決意して帰ってきた。
新年早々、インフルエンザにかかった。
その間、犀川君がずっとメールで励ましてくれた。
私のそばには犀川君がいつもいてくれる。
そう思うと、病気でも心強かった。
もうすぐ…
犀川君と出会った昨夏に約束した「雪暮れ」を
二人で見に行く旅に出る。
この半年、互いにずっと心待ちにしてきた旅だ。
この旅で、二人の距離はまた縮まるだろう。
地味でも一歩一歩、今年も距離を縮めていきたい。
先週末から絶不調に陥り、昨日まで床に伏していたのだが、
今日は仕事上、どうしても外せない案件があったうえ、
犀川君が「僕も早く終わるから会いましょうか」と言い出したので
なんとしても這い上がらねば!と、根性で出社した(笑)。
根性で這い上がった甲斐あって、コンペを勝ち抜き案件ゲット!
これでひどい頭痛もかなり軽減されたものの、熱のせいか
悪寒→発汗→悪寒→発汗を繰り返して、ぐったり。
そのまま会社に戻るのはやめて、喫茶店で休憩して
犀川君と落ち合うまで、時間を潰すことにした。
夕方になって、犀川君から「東京駅で会いましょうか」と連絡。
待ち合わせの時間に東京駅に向かうと、中央線のホームで犀川君が
待っていてくれた。やあ、と声を掛けると、すぐさま「こっちこっち」と
足早に犀川君がホームのエレベーターを降りてゆく。
慌てて追いかけてゆくと、寝台特急富士のホームへ。
方向幕には「大分」の文字。なんて懐かしいのだろう…何十年ぶりだろう。
来年3月についに廃止が決まったブルートレイン富士。
私が幼い頃、毎年のように実家の大分に戻る際に家族で乗った、
思い出深い列車なのだ。あの青を見る度に、胸がきゅんとなる。
犀川君にとっても、特別な列車だそうで、
思えば、富士の話で盛り上がったのが、付き合うきっかけだった。
思いがけず、富士を間近に見て、切なさでいっぱいになる。
6時すぎ、東京駅を後にする富士を見送りながら、
しばし2人、ホームで黄昏れた。
その後、丸の内のライトアップされた町並みを二人で歩いた。
犀川君は「洒落臭い街だな〜」と笑いながらも
「なんかね、ここが注目らしいよ」と何げに詳しかった(笑)
「よかったじゃん、私と一緒なら洒落臭い所行けるっしょ?」と言うと
「うん、まあ」と照れ笑いをしている。
途中、カフェに入って、二人でケーキを食べた。
そのまま、体調もいまひとつなので午後8時半には東京駅でお別れした。
健全な二人だな〜(笑)でも、悪くない。
しばらくしたら、犀川君からメールが入った。
「しまった!プレゼント渡そうと思ってたのに、忘れた!」(笑)
思わず、メールを読んで、ぷっと吹き出してしまった。
「明日の夜、会社抜け出していつも喫茶店に行くからその時に渡すよ」
思いがけず、明日も会えることになってラッキーだと告げた。
それにしても…犀川君がプレゼントを用意してくれていたなんて!
私なんて、思いつきもしなかった(笑)
これまで、犀川君はあまり、こうしたことに無頓着だったこともあって
私の方もすっかり油断していたのだ。いやはや、驚いた。
「期待しないで」と犀川君は言うけれど、
何をくれるか、なんてことよりも、
その気持ちだけで、十分嬉しい。
それが最高のクリスマスプレゼントだ。
帰りの電車、嘘のように頭痛が消えていた。
「ちょっと時間が作れそうだから、ちょっとだけ会おうか」
夕方に犀川君からメールがあった。
夜8時にいつものカフェで待ち合わせ。
顔を出すと、既に来ていた犀川君がニッコリ笑って出迎えてくれた。
青森・秋田への旅について、あれこれまた相談した。
ブルートレイン好きの二人なので、あけぼので青森まで行く。
やれ、B寝台にするか、個室にするか。
やれ、上野で乗り込む前に風呂に入れるかどうか。
やれ、上野で乗り込む前に夜ご飯どうしようか。
やれ、翌朝の朝ご飯はどうしようか?車内販売の駅弁か?
やれ、その翌日はどこに泊まろうか。温泉宿がいいな。
まだ犀川君と出会って間もない頃、彼に勧められた鉄道の写真集があった。
その中に、「雪暮れ」というタイトルの写真があった。
雪深い里にある小さな駅の夕暮れに、しんしんと雪が降る場面。
雪が積もる音以外は静寂だけがあるような、そんな写真。
すっかりこの世界観に魅せられて、見てみたいと言い出したのが
今回の旅プロジェクトの始まりだ。
ところが、この駅、とっても電車の乗り継ぎが悪い。
ここを目指すと、他の予定がすべて超タイトになってしまうという。
なので、「いいよ、ここ、行かなくて」と言うと
「でも、ここに行きたかったんだよね、ミサトさん」と犀川君。
「うん。でもさ、時間的に余裕があるわけじゃないしね。いい、いい」
「それじゃね、この駅じゃなくてもいいなら、この写真よりももっと
素敵な駅が他にもあるんだよ。そこに連れて行ってあげる」と犀川君。
「おお!それで十分。そうしよう、そうしよう」と私。
電車の乗り継ぎ等、鉄道周りの一切は彼に任せておけばよい。
私はかわりに、宿を探すことにした。
犀川君と初のお泊まりとなる宿である…。
雪深い街をさんざん歩いてたどり着く先だから
私としては温泉宿でゆっくり湯を楽しみたい。
食いしん坊なので、できればご飯がおいしい方がよい。
欲張るときりがない。でも、一番は、
なんとなく、雪深くて静寂で、まるで二人しかいないみたいな
そんなロマンチックな宿がいい…なんて夢は広がるばかりだ。
「雪でも見に行こうか」と犀川君が言い出した。
雪が好きだ、雪が好きだと私がよく言っていたからだろうか。
冬の青春18きっぷが届いたから、ゆっくり行こうかと犀川君。
たくさんの食べ物を買い込んで、グリーン車に乗り込んで、
仲良く並んで、話したり、手をつないだり、寝たりして電車を満喫。
「こんなデートでごめんね」と犀川君は言うけれど
実は私は電車に乗っているのが好き。
おまけに、電車内で食べるのが、幼少の頃から好きなので苦でない。
もちろん、犀川君と付き合うようになってから、
鉄道を意識するようになったけれど、こういう方が楽しいのだった。
そう言うと、犀川君は気を遣ってくれているでしょと笑う。
でも、二人がけのシートの列車は、ずっと二人で寄り添えるので
こんなに楽しい乗り物は、そうそうないのではないかとさえ思う。
そう言うと、犀川君は「ミサトさんはエッチだね」と笑うのだ。
天気予報がはずれて、結局、雪は降ってなかった。
それでも、風は剃刀のような鋭い冷たさで、すぐに喫茶店に入った。
「犀川君とこれからいろんな所に行ってさ、
行く先々で犀川君は鉄道を堪能する。
私は行く先々で駅弁を堪能し、カフェを探すというのはどうだろう?」
そう言うと、犀川君は目を輝かせながら「いいね!それ」と賛成してくれた。
そして、二人で初の泊まりがけの旅として、秋田へわっぱを買いに行こうと
いうことで盛り上がった。偶然に二人して、わっぱが欲しかったのだ。
ぽっかぽかの喫茶店の中で、私は旅のしおりとなるイラスト入り
行程表を書き、犀川君は時刻表でスケジュールを決めていった。
喫茶店にあったナプキンに書き込んだ旅のしおり。
途中、鉄道の写真を撮影に犀川君が席を外している間に
もう一枚のナプキンに同じ行程表を書いて、犀川君にプレゼントした。
「いいね、こういうの」と喜んでもらえて嬉しい。
これから、旅の予定をたてる際には、毎回、こうしてしおりを作ろう。
このしおりの数が増えるたびに、私たちの仲がますます深まりますように。
今日は久しぶりに、ミーティングでハヤテに会った。
会合場所にやってきたハヤテは、何だか、疲れきった顔で
髪もねっとり頭にはりついていた…。そして開口一番、
「体調わりぃ。目覚めたら、カラオケボックスの床に寝てた…」だそうだ。
相変わらず、仕事なのか、遊びなのか、その境界すら曖昧な中で
風呂にも入らず、家にも帰らず、年甲斐もなく徹夜する生活を繰り返している。
以前の私なら、これら全てが愛おしく感じたというのに
なぜだろう、今日は全く心動かされることもなく、シラッしていた。
むしろ、なんで、こんなに小汚い風貌の男に惚れていたのだろう?と
不思議に思えるほどだった。いよいよ、恋の魔法は解けたらしい。
恋している目は本当に不思議だ。
何もかも美しく、何もかも素敵に変えてしまう。
恋のフィルターは本質を歪ませてしまうことを、経験で知っているのに
何度恋しても、この魔法に落ちてしまう。
この恋こそは本物。
この恋こそは最後。
そんな切実な思いに突き動かされて、激情に身を焦がしていたのに
恋の嵐が過ぎ去ってしまうと、何もかもが幻のように朧だ。
あれだけハヤテが好きだったのに。
何もかも投げ打っても、ハヤテだけは欲しいと思っていたのに。
ハヤテさえいえば、他に何も要らないと本気で思っていたのに。
嘘のように、全ての感情が消えてしまった。
今はむしろ、本当に好きだったのかな?なんて疑問ばかりが浮かんでくる。
どうやら、私の心はすっかり犀川君に染まったようだ。
相変わらず、彼の煮え切らない態度にはイライラは募るけれど
それでも、犀川君に夢中であることに変わりはない。
ミーティングが終わり、ハヤテと別れた後、
無性に犀川君に会いたくなった。
無論、年末の仕事に忙殺されている犀川君に会えるはずもない。
なので、唐突だけどメールで「大好きだ」と送った。
すぐに犀川君から「僕も大好きだよ」と返ってきた。
じんわり胸の奥があったかくなる。
これが幸せというものか。
こんなにあったかくしてくれるのは、
今は犀川君以外にあり得ない。
いつか、魔法が解ける日が再び来るかもしれないけれど
ずっと一緒にいる努力をしましょうと言ってくれた
犀川君を信じて、私も努力しようと誓ってみた。
最近のコメント